今回紹介する名盤はJoão GilbertoやVinícius de Moraesと共にボサノヴァ創始者の一人とされるアーティストのアルバムです。
ジャンル
ボサノヴァ
ブラジル
Antônio Carlos Brasileiro de Almeida Jobim
アーティスト
Antônio Carlos JobimはTom Jobimとも呼ばれていました。(以下Tom Jobim)
Tom Jobimはブラジル近代音楽の父の異名を持つPixinguinhaやクラシック音楽にブラジル音楽を取り入れた大作曲家Heitor Villa-Lobos、そして代表作「海」「夜想曲」などで知られるDebussyから影響を受けました。
14歳頃からピアノと作曲を始め、将来は音楽家を志す少年時代を過ごしますが大きくなるにつれて、家族を養うことを考えて建築を学びました。
結婚もして働き始めましたが、やはり音楽のことを忘れきれずピアノ奏者としてひっそりと活動していました。
そして、売れないピアニストとして終わらないのがTom Jobimなんです。
ブラジルのクラシック音楽とポピュラー音楽に関わっていたRadamés Gnattaliに見出だされ、楽譜がわからないアーティストの曲の譜面起こしや編曲の仕事などを任されました。
地道に頑張っていたTom Jobimについにチャンスが訪れます。
ボサノヴァ創始者の一人Vinícius de Moraesが制作した舞台「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」(後に「黒いオルフェ」として映画化され大ヒットする)の音楽を担当し、有名作曲家の仲間入りを果たしました。
そして、Tom JobimとVinícius de Moraesで作り上げた「想いあふれて」をボサノヴァ創始者の一人João Gilbertoに演奏してもらいボサノヴァが誕生しました。
するとブラジルでボサノヴァムーブメントが起こりました。
そして、Tom Jobimの代表曲「イパネマの娘」は
The Beatlesの「Yesterday」に次ぐほどカバーされるボサノヴァの代表曲です。
Tom Jobimは音楽の他にもう1つ好きなものがあります。
それは飛行機を眺めることでした。
飛行機好きが高じてヴァリグ・ブラジル航空のCMソングとして作詞・作曲した「ジェット機のサンバ」を提供したり、Tom Jobimの死後、彼の功績を称えるためにガレオン空港は「アントニオ・カルロス・ジョビン国際空港」と改名されました。
また、ブラジルではTom Jobimの死に際して大統領は国民に3日間の喪に服すようにと話したそうです。
アルバム
本作はTom JobimがA&Mに移籍して1発目のアルバムになります。
ジャズ界では有名なベーシストRon Carterがベースを担当しています。
ボサノヴァというと呟くようなボーカルが特徴的ですが、本作は「Lamento」を除く全てがインストなんです。
純粋なボサノヴァとは少し違っていて、ボーカルの代わりにストリングスを導入し、とても高度で繊細な音楽に仕上がっています。
しかし、本作は「究極のイージーリスニングミュージック」として親しまれました。
高い音楽理論に基づき、超一流の奏者がここまで洗練された演奏をしているのに「究極の簡単に聴ける音楽」だと?と疑問に思いしましたが、カフェやレストラン、部屋、車中、屋外そして、朝昼晩いつでも気軽に聴けて雰囲気を作ってくれる音楽はめったにありません。
しかも音楽好きは勿論、音楽に興味の無い人でも不快にならない音楽なんです。
引力や風など様々な難しい要因が複雑に重なって発生する穏やかな波のような名盤を是非。
Wave
Antonio Carlos Jobim A&M 1990-10-25
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